東京都と一体の生活圏なのに報酬には差 介護人材の確保へ、通勤・経済圏を踏まえた制度への転換を要望

埼玉県と八潮市を含む県内12市が、介護サービスを支える人材の確保に向け、国に制度の見直しを求めました。
埼玉県は2026年8月24日、大野元裕知事と東京都に隣接する12市が共同で、介護報酬の「地域区分」を見直すよう国に要望したと発表しました。県側は、東京都内と埼玉県内で生活圏や所得水準に大きな隔たりがない地域でも介護報酬に差が生じているとして、現在の仕組みが地域の実情を十分に反映していないと訴えています。
八潮市も共同要望に参加 12市が国へ
今回、埼玉県とともに要望書に名を連ねたのは、川口市、秩父市、所沢市、飯能市、草加市、戸田市、入間市、朝霞市、和光市、新座市、八潮市、三郷市の12市です。
要望は8月24日午後1時40分から厚生労働省で行われ、神谷政幸厚生労働大臣政務官に提出されました。八潮市からは前田秀明副市長が参加しています。秩父市、戸田市、入間市の市長は所用のため当日の要望活動には参加していませんが、要望書には12市の市長名が記されています。
そもそも「介護報酬の地域区分」とは?
介護サービス事業者に支払われる介護報酬は、全国一律ではありません。地域による人件費の違いを調整するため、市区町村ごとに「地域区分」が設定され、サービスの種類などに応じて1単位あたりの単価が変わる仕組みになっています。
2024年度から2026年度までの現在の区分では、東京都23区は「1級地・上乗せ割合20%」。一方、八潮市は2024年度から特例によって、それまでの6級地から5級地・上乗せ割合10%へ引き上げられています。なお、この割合がそのまま介護サービス全体の料金差になるわけではなく、実際の1単位あたりの単価はサービスごとに定められた人件費割合などを踏まえて計算されます。
県は、2024年度から東京都特別区に隣接する市について6級地から5級地へ引き上げられる新たな特例が設けられたものの、今も自治体間で大きな級地差が残っているとしています。
「東京と一体の生活圏」でも報酬に差
今回の要望で県と12市が特に問題視しているのが、県境を挟んだ地域間の格差です。
八潮市をはじめ東京都に近い県内各市は、鉄道路線などで都内と直接結ばれ、通勤や買い物など日常生活の面でも東京都側と一体となった生活圏を形成しています。
県の要望書では、東京都内と県内市の所得差は小さく、場所によっては県内市の方が高いケースもある一方、介護報酬には地域区分による格差が残っていると指摘。その状況が介護人材の確保にも影響しかねないとして、現在の制度を地域の実態に合わせる必要があるとしています。
介護施設や事業所にとって人件費は大きな負担です。同じ生活圏の中で勤務地によって報酬の基礎となる水準に差があれば、より条件の良い地域へ人材が流れる可能性があります。県と12市が今回そろって声を上げた背景には、こうした「県境を越えた人材確保」の課題があります。
国に求めたのは大きく2点
要望書で国に求めた内容は、大きく2つです。
1つ目は、介護職員を各地域で安定的に確保できるよう介護報酬の地域区分を設定すること。
2つ目は、地域区分の見直しに際し、これまでの国家公務員の地域手当に準拠する考え方から脱却することです。そのうえで地方自治体と十分に議論し、通勤圏や経済活動の圏域などを考慮しながら、地域の実情を適切に反映した制度にするよう求めています。
県はさらに、2024年の人事院勧告による国家公務員の地域手当区分が、そのまま今後の介護報酬の地域区分に反映された場合、自治体間の級地差がさらに広がる可能性があると指摘しています。
2027年度の介護報酬改定を前に動き
今回の要望は、国で2027年度(令和9年度)の介護報酬改定に向けた議論が進む中で行われました。
埼玉県では2040年に向け、介護需要が大きくなる85歳以上の高齢者が全国でもトップレベルのスピードで増加すると見込んでいます。県は資格取得支援や介護テクノロジーの導入など人材確保策を進めていますが、安定した介護サービスを維持するには、介護職員のさらなる処遇改善が欠かせないとしています。
八潮市から東京都内へは日常的に多くの人が行き来しています。行政上は県境で分かれていても、働く人にとっては必ずしもそこで生活圏が分かれているわけではありません。
今回の共同要望が、こうした実際の人の動きに合わせた制度見直しにつながるのか。2027年度の介護報酬改定に向けた国の議論が注目されます。
出典・確認日
埼玉県「介護報酬の地域区分の見直しに係る国への県・12市共同要望について」(2026年8月24日発表)
埼玉県「介護報酬の地域区分の見直しに係る要望」(2026年8月24日)
厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」(令和6~8年度の地域区分)
情報確認:2026年8月25日
<Hacchinさん>
「やしおん」運営代表。ずっと八潮の人。30年近くネットの世界にいます。現在本職は小さなゲーム会社の管理部長。BBQインストラクター資格。とある町会役員。
八潮市の他、生活エリアである近隣の情報など拾っています。












