1660年から県東部の農業を支えてきた歴史的な水路 身近な風景が世界に認められる存在に

葛西用水(草加~八潮)
八潮市内を流れ、私たちにとって身近な水辺のひとつでもある「葛西用水」が、世界かんがい施設遺産に認定されることが決定しました。
埼玉県が2026年8月21日に発表したもので、国際かんがい排水委員会(ICID)が、葛西用水路土地改良区から申請されていた葛西用水について、世界かんがい施設遺産として認定することを決定したということです。埼玉県内では、2019年の「見沼代用水」、2020年の「備前渠用水路」に続く3例目となります。
「やしおん」でも2026年5月、葛西用水が世界かんがい施設遺産の国内候補に選ばれたことをお伝えしました。あれから約3か月。八潮のまちなかを流れる、いつもの水路が世界的な歴史的価値を持つ施設として認められることになりました。
1660年から続く、埼玉県東部の大切な水路
葛西用水の供用開始は1660年。開削当時の幹線は約80キロにも及び、利根川から取り入れた水を埼玉県東部の広い地域へ届けてきました。
現在も約6,800ヘクタールの農地を潤す、現役の農業用水です。利根川の旧河道など自然の地形をうまく利用しながら水を流し、途中には水をためる「溜井(ためい)」を設けるなど、地域の地形に合わせた工夫が長い年月にわたって受け継がれてきました。
2026年4月に農林水産省が発表した申請区域には、羽生市、加須市、久喜市、幸手市、春日部市、越谷市、吉川市、草加市、八潮市、三郷市、杉戸町、松伏町の12市町が名を連ねています。県東部を広くつないできた水のネットワークであり、八潮市もしっかりその一部に含まれています。
八潮では「農業用水」だけではない、身近な水辺に

八潮市 葛西用水自然観察広場 公式サイトより

伊草地区での灯ろう流し
「世界かんがい施設遺産」と聞くと、遠くにある大きな歴史遺産を思い浮かべるかもしれません。
ところが葛西用水の場合、八潮の皆さんにとってはかなり身近な存在です。
八潮市では葛西用水沿いに自然観察広場などがあり、市の案内でもザリガニや小魚などと触れ合える水辺として紹介されています。また、越谷市・草加市・八潮市をつなぐ葛西用水路沿いの散策マップも作られるなど、農業用水としての役割だけでなく、散歩や自然観察を楽しめる場所として親しまれてきました。
昔からそこにあるため、普段はその歴史を意識することも少ないかもしれません。
しかし、その水の流れをたどってみれば、江戸時代から現在まで地域の農業と暮らしを支えてきた長い歴史があります。今回の認定決定は、そんな「いつもの風景」が持つ価値を改めて知るきっかけにもなりそうです。
世界かんがい施設遺産とは?

世界かんがい施設遺産は、歴史的なかんがい施設の価値を広く伝え、適切な保全につなげるため、国際かんがい排水委員会(ICID)が認定・登録する制度です。
制度は2014年に始まり、2025年までに日本国内では56施設が登録されています。ICIDは1950年にインドで設立された国際組織で、世界のかんがい・排水に関する技術や知識の共有・発展を目的としており、現在82の国と地域が加盟しています。
古いから評価される、というだけではありません。
長い年月にわたって農業を支え、地域の地形を生かした仕組みが受け継がれ、そして今も実際に使われ続けていること。その積み重ねが、葛西用水の大きな価値といえます。
何気なく見ていた水路が、世界へ

春には水辺を歩き、夏には生き物を探し、普段の生活では何気なく横を通り過ぎる――。地元で暮らしていると、葛西用水はそんな日常の景色のひとつです。
その水路が1660年から続き、現在も約6,800ヘクタールもの農地を支え、そして今回、世界かんがい施設遺産として認められることになりました。
「世界的な遺産」と聞くと少し大げさに感じるかもしれませんが、世界に評価されたものがすぐ身近を流れていると思えば、次に葛西用水のそばを歩くとき、いつもとは少し違った景色に見えてくるのではないでしょうか。
地域に受け継がれてきた水の歴史が、これからどのように守られ、次の世代へ伝えられていくのか。今回の認定をきっかけに、葛西用水への注目はさらに高まりそうです。
出典・確認資料
・埼玉県「『葛西用水』が世界かんがい施設遺産に認定されることが決定しました」
発表:2026年8月21日 14時
・農林水産省「令和8年度世界かんがい施設遺産申請施設の決定について」
発表:2026年4月28日
<Hacchinさん>
「やしおん」運営代表。ずっと八潮の人。30年近くネットの世界にいます。現在本職は小さなゲーム会社の管理部長。BBQインストラクター資格。とある町会役員。
八潮市の他、生活エリアである近隣の情報など拾っています。














