江戸100万人都市を支えた歴史的農業用水 葛西用水が世界かんがい施設遺産登録へ前進

草加から八潮にかけて流れる葛西用水路
八潮市や草加市、三郷市、そして東京足立区や葛飾区など、埼玉県東部や都内に暮らす人々にとって身近な存在である「葛西用水」が、世界的な歴史遺産として認められる可能性が高まっています。
農林水産省は4月28日、「令和8年度 世界かんがい施設遺産」の国内申請施設を決定したと発表。その候補のひとつとして、埼玉県東部から東京都葛飾区方面へと続く「葛西用水」が選ばれました。
今回選定された国内候補は全国で4施設。埼玉県の「葛西用水」のほか、静岡県掛川市・菊川市の「小笠地域かんがい用水群」、大阪府泉佐野市の「日根荘のかんがい用水群」、そして奈良県天理市の「崇神天皇陵堀」が選定されました。
小笠地域かんがい用水群は、静岡県西部の茶畑地帯を支えてきた用水群として知られています。日根荘のかんがい用水群は、中世荘園の水利システムを現在まで残す貴重な施設。そして崇神天皇陵堀は、古墳の濠を農業用水として活用してきた歴史が評価されています。
では、「世界かんがい施設遺産」とはどのような制度なのでしょうか。
世界かんがい施設遺産とは?

世界かんがい施設遺産は、正式には国際かんがい排水委員会(ICID)が認定する国際制度です。
ICIDは1950年に設立された国際機関で、本部はインド・ニューデリーにあります。世界各国の農業用水や排水技術、水資源管理などについて研究・交流を進める組織で、日本は1951年から加盟しています。
世界かんがい施設遺産制度は2014年に創設。制度の目的は、単に「古い施設」を保存することではありません。
長い歴史の中で地域の農業や暮らしを支え続け、優れた技術や知恵によって維持されてきたかんがい(農作物の育成や安定生産を目的として、河川やため池、地下水などから人工的に水を水田や畑へ供給する)施設を世界的な財産として評価し、未来へ継承していくことにあります。
認定対象となるのは、おおむね100年以上の歴史を持ち、
・農業の発展に大きく貢献したこと
・独創的な技術や工法を持つこと
・現在も機能し続けていること
・地域文化や景観形成に寄与していること
など、複数の基準を満たす施設です。
単なる“歴史遺構”ではなく、「今も現役で地域を支えている」という点が大きな特徴です。
日本は世界有数の登録数

世界かんがい施設遺産は、2024年時点で世界20カ国177施設が登録されています。
その中でも日本は登録数が多く、昨年までに国内56施設が認定されています。
埼玉県内ではすでに、
・見沼代用水
・備前渠用水路
の2施設が登録済みです。
いずれも江戸時代の高度な土木技術や農業発展への貢献が評価されました。
世界的に見ると、日本の農業用水施設は「限られた水を効率よく使う高度な水管理技術」が高く評価されているといわれています。
特に江戸時代の日本では、大河川の治水、新田開発、用水整備が一体的に進められ、人口増加を支える食料生産基盤が築かれました。
葛西用水も、その代表的な存在のひとつです。
次のページに進みます。











