人を支える”一本の手すり”に込められた技術

避難機器の製造現場を見学した後、案内していただいたのは、ナカ工業を代表する製品のひとつである「手すり」の製造エリアです。
普段、病院や学校、駅、公共施設などで何気なく手を添えている手すりですが、その一本一本には利用者の安全を守るためのさまざまな工夫が詰め込まれています。
ナカ工業は医療・福祉施設向け手すりの分野で国内トップクラスのシェアを誇り、日本全国の病院のおよそ7割で同社製品が採用されているといわれています。
つまり、多くの人が気付かないうちに、ナカ工業の製品に支えられているということになります。

工場では用途ごとに異なる素材や形状の手すりが製造されていました。
病院の廊下で使われるもの。高齢者施設で身体を支えるもの。学校や公共施設に設置されるもの。屋外で雨風にさらされるもの。
同じ「手すり」という製品でも、設置場所によって求められる性能はまったく異なります。
利用者の身体を支えるだけでなく、素材、衛生面、耐久性、施工性、さらには建物全体のデザインとの調和まで考慮しながら設計されていることを知り、製品づくりの奥深さを感じました。
曲げても強い。その裏側にある熟練の技術
説明の中で特に印象に残ったのが、曲線階段に設置される手すりについてのお話でした。
建物によっては、緩やかなカーブを描く階段やらせん階段があります。当然、手すりもその形状に合わせて曲げ加工を行わなければなりません。
しかし、金属は加工方法によっては強度が低下することがあります。
人の体重を支える手すりにとって、これは決して見過ごすことのできない課題です。

在来工法では「曲げ」を構成する際に切れ込みを入れて曲げる方法ですが、ナカ工業が実践するのは「焼き」入れでの曲げの加工方法。ナカ工業では、長年培ってきた加工技術やノウハウによって、曲げ加工後も十分な強度を維持できる製品づくりを実現しているそうです。
図面どおりに加工するだけではなく、安全性を損なわない品質を確保することを積み重ねこそが、多くの医療施設や公共施設から信頼を集める理由なのだと感じました。
安全性だけではなく、デザイン性も追求

近年では、手すりに求められる役割も変化しています。
従来は「つかまるための設備」という位置づけでしたが、現在では建物全体の景観や利用者の利便性まで考慮した製品開発が進められています。
例えば、高輝度蓄光式の誘導ラインを組み込んだ手すり。停電時などでも避難経路を確認しやすく、防災性を高めています。

また、LED照明を内蔵した屋外用手すりも開発されており、夜間の歩行をサポートするだけでなく、建築デザインの一部としても活用されています。
さらに、トイレまわり用手すり「愛の手OVAL」や「愛の手NS」、立ち座りをサポートする「レストハンド」など、障がいをお持ちの方や高齢社会を見据えた製品も数多く展開しています。
利用者だけでなく介助者の負担軽減まで考えられていることからも、「人に寄り添うものづくり」という企業姿勢が伝わってきました。

製品の品質を支える技術研究所
今回の見学では撮影は控えましたが、技術研究所も案内していただきました。
そこでは実際の使用環境を想定したさまざまな試験が行われています。
高温・低温環境での耐久試験、長期間荷重をかけ続ける強度試験、繰り返し使用を想定した耐久テストなど、こうした試験を繰り返すことで、製品の安全性や品質を確認しています。
私たち利用者は完成した製品しか目にすることはありませんが、その裏側では何度も試験と改良が繰り返され、安全性が確認されたものだけが製品として世の中へ送り出されているのです。
品質は検査を繰り返し、設計と製造の積み重ねで生まれるということを実感させるような研究開発の現場でした。
八潮から全国へ、そして世界へ
ナカ工業では今回見学した製品以外にも、数多くの建材を製造しています。
50年以上販売が続くロングセラーの天井点検口「ハイハッチ」。
オフィスビルには欠かせないOAフロアや、サーバールーム向けフリーアクセスフロア。
地震時の建物の動きに対応する免震エキスパンションジョイントカバー。
階段の滑り止めや点字鋲など、私たちの暮らしを支える製品は実に多彩です。



普段は目立たない存在ですが、建物を安全・快適に利用するためには欠かすことのできないものばかりです。
それらが八潮市で開発・製造され、日本全国、さらには海外へも届けられていることを知ると、地域企業の存在を誇らしく感じます。
見学を終えて感じたこと

約2時間の工場見学は、本当にあっという間でした。
製品の説明を受けながら製造工程を見学していると、「こんなところにもナカ工業の製品が使われているのか」と驚く場面が何度もありました。
何より印象的だったのは、説明頂いた社員の皆さんが自社製品に誇りを持ち、一つひとつ丁寧に説明してくださったことです。
製品の性能だけでなく、「この製品で誰かの命を守りたい」「もっと使いやすいものを届けたい」という思いが、説明の端々から伝わってきました。
工場見学というと、機械や設備に目が向きがちですが、最終的にものづくりを支えているのは、やはり「人」なのだと改めて感じました。
“ものづくりのまち・八潮”をもっと知ってほしい

八潮市には、全国的にはあまり知られていないものの、高い技術力を持つ企業が数多く存在しています。
それぞれの企業が独自の技術を磨き、日本全国、さらには世界へ向けて製品を送り出しています。
しかし、市民であってもその仕事内容を知る機会は決して多くありません。だからこそ、今回のような工場見学は非常に意義のある取り組みだと感じました。
地域の子どもたちが地元企業を知り、「こんな仕事があるんだ」「八潮ってすごいんだ」と感じられる機会が増えれば、将来の人材育成や地域への愛着にもつながっていくでしょう。
また、大手企業と地域の中小企業との交流がさらに活発になれば、新たな技術やアイデアが生まれ、八潮市全体の産業発展にもつながっていくのではないでしょうか。
今回の工場見学を通して改めて感じたのは、私たちの暮らしを支える製品は、決して偶然生まれているのではないということ。長年培われた技術、厳しい品質管理、そして何より「安全で使いやすい製品を届けたい」という人々の思い。その積み重ねが、病院や学校、マンション、オフィスビルなど、私たちの日常を支えています。
普段何気なく触れている手すりや設備の向こう側には、八潮市で働く多くの人たちの努力がありました。
今回の見学は、「ものづくりのまち・八潮」の魅力を改めて実感するとともに、地域企業への見方が大きく変わる貴重な時間となりました。
最後になりますが、このような貴重な機会をご提供いただいたナカ工業株式会社の皆さま、そして八潮工業会の皆さまに心より感謝申し上げます。
これからも八潮市には、全国に誇れる企業や技術が数多く存在することを、「やしおん」を通じて皆さんにお伝えしていきたいと考えています。

ナカ工業の公式キャラクター「手すり侍」。ゆるキャラグランプリにもエントリー実績があります。手すりの正しき選び方を世の中に広めるため、戦国の世を駆け回ります。
ナカ工業株式会社
https://www.naka-kogyo.co.jp/
八潮工業会
https://www.instagram.com/yashio840indust
<Hacchinさん>
「やしおん」運営代表。ずっと八潮の人。30年近くネットの世界にいます。長年ベンチャー企業でエンタメ業界や株式公開など、色々ともまれまして、現在本職は小さなゲーム会社の管理部長。BBQインストラクター資格。とある町会役員。











