財務書類のポイントを簡単に解説!市の資産や負債、行政コストの状況とは?

八潮市役所新庁舎
みなさん、こんにちは!「やしおん」運営のHacchinさんです。
先日、八潮市の方で、「令和5年度決算に係る統一的な基準による財務諸表」という記事がリリースされていました。
目的としては、市の財政状況を分かりやすく市民の方にお伝えすべく、総務省の示す統一的な基準により、財務書類4表(「貸借対照表」「行政コスト計算書」「純資産変動計算書」「資金収支計算書」)および固定資産台帳を作成したとあります。 要するに総務省提示のフォーマットに落とし込んだものですね。
これも十分わかりやすいものではあるのですが、今回は この令和5年度決算に係る八潮市の財務状況 について、ちょっと身近に感じられるように企業の経営に置き換えてわかりやすく説明してみようと思います。
決算書と聞くと難しく感じるかもしれませんが、「会社の経営状態を知る」ような感覚で見ていくと、意外とシンプルなのかなと。てことでご説明いたしますが、ちょっとわかりにくかったり間違っていたらすみません!!
八潮市の財務状況を企業の決算に例えてみる

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まず、八潮市の「会社の財務状況」として、どれだけの資産を持っていて、どれくらい借金があるのか? を見てみましょう。
八潮市の 総資産 は 1,135.5億円 で、前年(1,083.9億円)から 51.6億円増となりました。これは、たとえば 企業が新しい設備投資をした というイメージに近いです。
一方で、負債(借金のようなもの) も 35.9億円増えて359.0億円 になっています。これは、設備投資のために 銀行から借入を増やした のと同じような感覚ですね。
その結果、純資産(会社でいう「自己資本」)は 776.5億円 で、前年度(760.8億円)から 15.7億円増えました。つまり、会社の内部留保(貯蓄)が少し増えた、というイメージです。
資産の約90%が固定資産(庁舎や学校、道路など)で、長期的に市民生活を支えるものとなっています。一方で、負債の大部分は 地方債(市が発行した借金) であり、これが市の将来の財政運営に影響を与える可能性があります。
会社の「利益」にあたる行政コストの話

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次に、1年間でどれくらいの「費用」がかかっているのかを見ていきます。企業にとっては「営業コスト」、自治体にとっては「行政コスト」と呼ばれるものですね。
どんな費用がかかっているの?
八潮市が令和5年度に使ったお金は 320.7億円 で、前年度より 6.0億円増加 しています。これは企業でいうと「売上を増やさないと利益が減る」状態です。
- 人件費(職員の給与など) → 50.1億円(前年比+2.4億円)
企業でいう「給与」や「福利厚生」などが増えたイメージです。 - 物件費(施設の維持費など) → 92.0億円(前年比-2.1億円)
ちょっと節約した感じですね。 - 移転費用(社会保障・補助金など) → 169.6億円(前年比+5.0億円)
生活保護や福祉サービスが増えたということで、社会的なサポートに力を入れています。
市の「行政コスト」は、企業の「営業費用」と考えると分かりやすいでしょう。例えば、企業は従業員に給与を支払い(人件費)、設備の維持管理(物件費)、営業活動にかかる費用(販売促進費・広報費)を支出します。自治体の場合は、社会保障費や補助金などがこれに相当します。
そして、これらの費用を補うための「収益(企業でいう売上)」として、使用料や手数料が 11.6億円 入っていますが、前年度(17.0億円)から 31.8%も減少 しています。
これは、たとえば 「お客さんが減って売上が落ちた会社」 のような状況に似ています。
ちなみに、この直接負担する手数料や使用料などの収益の 11.6億円 は、行政コスト全体の 3.6% をカバーしています。この割合は県内平均とほぼ同じ水準です。
会社の「収支バランス」と同じ「プライマリーバランス」

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企業でいうと「利益が出ているかどうか?」を判断する指標に、自治体の場合は「プライマリーバランス」があります。
八潮市の プライマリーバランス は -42.9億円 で、前年(-14.5億円)と比べると 28.4億円の赤字拡大 になりました。これは企業でいうと「営業赤字が大きくなった」状態です。
要するに、コストが増えたけど、収入が減ってしまった ということですね。こうなると、企業なら「コスト削減」や「売上アップ」の対策を考えるところですが、自治体の場合は「どこで支出を調整するか」が重要になります。
じゃあ、八潮市の財務は大丈夫なの?
企業経営の視点で見てみると、八潮市の財務状況は 「安定しているけれど、借入に頼る割合が少し増えてきた」 という感じです。
いいところ(財務の安定性)
- 純資産比率(自己資本比率)が68.4% → 企業でいうと「財務はしっかりしている会社」
- 資産総額は1,135.5億円で増加 → 設備投資(インフラ整備)が進んでいる
市民一人あたりの資産額は 約121万円 で、県内平均の 132万円 をやや下回ります。
気をつけたいところ
- 将来世代負担比率(借入の依存度)が31.9%(前年より0.8ポイント増)
→ 「借入に少し依存する経営になってきた」状態
純資産比率(市の財産のうち、借金を除いた割合)は 68.4% で、県内平均(74.1%)より低めです。将来の世代に負担がかかる「将来世代負担比率」は 31.9% と、県内平均(13.1%)より高く、注意が必要です。 - プライマリーバランス(市の営業利益)が赤字拡大
→ 「コスト増 & 収入減で経営が厳しくなってきた」状態
収支のバランスを示すプライマリーバランスは 約42.9億円の赤字 で、前年より赤字幅が拡大しています。これは、投資支出(公共施設整備など)が増加した影響が大きく、長期的な財政計画の見直しが求められるような状況です。
これから八潮市がやるべきことは?

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企業経営でも「売上を伸ばす」「コストを削減する」の両方が必要ですが、市の財政も同じです。
-
「売上を伸ばす」(自治体の収入を増やす)
- 企業誘致・商業施設の開発を促進 して税収を増やす
- 観光・イベントの活性化 で市の収益を上げる
- 公共施設の有効活用 で使用料収入を増やす
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「コストを削減する」(無駄な支出を減らす)
- 行政の効率化(デジタル化) で業務コスト削減
- 施設維持コストの見直し(老朽化施設の統廃合など)
- 補助金・社会保障支出の適正化(本当に必要なところに適切に分配)
ということが、八潮市に限らず自治体としての動きとして、一般的に掲げられている内容です。
「八潮市」はどんな企業に似ている?
- インフラ企業(電力・ガス・鉄道会社)
→ 資産(道路・学校・公園など)が大きく、長期的に安定している
- 大手製造業
→ 設備投資をしているが、借入が少し増えている - 経営が少し厳しくなっているサービス業
→ 売上(使用料収入)が減っているので、今後の施策が必要
八潮市の財務は 「安定しているけれど、経費増と収益減が続くと厳しくなる」 という状況です。資産と負債のバランスが取れているものの、借入金(地方債)の割合がやや高く、今後の返済計画が重要な課題となっています。
市の財務状況は市民の生活に直接関係する重要な情報です。財政の透明性を高めながら、持続可能な財政運営を目指す必要があります。市民の我々としても、財政の状況を知りながら、より良い市政運営のために何ができるか考えていきたいですね。
<Hacchinさん>
「やしおん」運営代表。ずっと八潮の人。30年近くネットの世界にいます。長年ベンチャー企業でエンタメ業界や株式公開など色々と荒波にもまれ、現在本職は小さなゲーム会社の管理部長。BBQインストラクター資格