八潮から春日部へ「自動運転BRT」構想が始動 東埼玉道路を活用した次世代交通網の実現へ

6市1町が連携して導入構想を公表 渋滞緩和、防災力向上、地域活性化を目指す東部地域の未来プロジェクト

実証実験がはじまった自動運転バス 新宿駅西口-東京都庁ルート (東京都新宿区新宿駅 2025年4月撮影)

参考:実証実験を行なっている自動運転バス 新宿駅西口-東京都庁ルート

埼玉県東部地域の交通のあり方を大きく変える可能性を秘めた構想が公表されました。

埼玉県東部地域道路交通研究会は5月29日、「東埼玉道路沿線地域におけるBRTなど新たな交通システムの導入構想」を公表しました。

八潮市周辺の(仮称)外環八潮スマートICから春日部市の庄和ICまでを結ぶ東埼玉道路を活用し、自動運転専用道路やBRT(バス高速輸送システム)の導入を目指すもので、将来的な渋滞緩和や地域活性化、防災機能の向上などが期待されています。

▶首都圏を結ぶ新動脈「東埼玉道路」の展望 八潮市から春日部市へ 国土交通省関東地方整備局

東埼玉道路

東埼玉道路/春日部市公式サイトより

東部地域が抱える交通課題の解決へ

近年、埼玉県東部地域では大型商業施設や物流施設の集積が進み、自動車交通量が増加しています。越谷レイクタウン周辺をはじめ、主要幹線道路では慢性的な渋滞が発生しており、通勤や物流への影響も課題となっています。

こうした状況を受け、春日部市、草加市、越谷市、八潮市、三郷市、吉川市、松伏町の6市1町は令和5年に「埼玉県東部地域道路交通研究会」を設立。八潮市長が会長を務め、国土交通省や埼玉県とも連携しながら、新たな交通システムの導入に向けた調査・研究を進めてきました。

今回公表された構想は、その約3年にわたる検討の成果をまとめたものです。

「自動運転BRT」とはどのような仕組みなのか

東京BRT© TOKYO BRT

東京BRT © TOKYO BRT

BRT(Bus Rapid Transit)は、専用レーンや高度な運行管理システムを活用することで、一般的な路線バスよりも速達性や定時性を高めた公共交通システムです。

鉄道と比べて整備コストを抑えながら、多くの利用者を効率的に輸送できることから、全国各地で導入が進められています。

今回の構想では、東埼玉道路に自動運転専用道路を整備し、その空間を活用してBRTを運行する将来像が描かれています。さらに、パーク&ライドの導入によって、自家用車利用者を公共交通へ転換し、地域全体の交通負荷を軽減することも目指しています。

全国で広がる次世代交通 東埼玉道路構想はさらに一歩先へ

近年、国内では次世代公共交通への注目が高まっています。

東京都では、虎ノ門ヒルズや新橋と晴海・豊洲エリアを結ぶ「東京BRT」が運行され、鉄道を補完する交通機関として利用者を増やしています。

また、BRTでありませんが、栃木県では2023年に開業した宇都宮ライトレール(LRT)が大きな話題となりました。開業後は利用者数が当初予測を上回り、公共交通を軸としたまちづくりの成功事例として全国から注目を集めています。

宇都宮ライトレール(LRT)

宇都宮ライトレール(LRT) © 2024 Utsunomiya Light Rail Co., Ltd.

さらに葛飾区でも、新金線の旅客化を見据えた交通システムの検討が続いており、鉄道空白地域の移動手段確保が重要なテーマとなっています。

葛飾区が新金線を活用したBRT整備構想が明確化 2030年代後半の段階開通を目標に検討進む

葛飾区が検討を進めている新金線を活用したBRT整備構想

そのような全国の事例と比較しても、東埼玉道路構想の特徴は「自動運転専用道路」を前提としている点です。

単なるバス路線の強化ではなく、自動運転技術を活用した次世代モビリティの実証フィールドとしての側面も持ち合わせています。

八潮市や草加市、越谷市など各地域に期待される効果

国道4号 東埼玉道路

国道4号 東埼玉道路

研究会では、自動運転BRTの導入によって4つの大きな効果を見込んでいます。

1.渋滞に左右されない定時性の高い交通手段の確保

国土交通省 関東地方整備局 公式サイトより周辺はバス利用者も多く、時間どおりに移動できる公共交通への需要が期待されています。

2.産業拠点へのアクセス向上

草加工業団地、草加・八潮工業団地、草加柿木フーズサイト、東埼玉テクノポリス、松伏田島産業団地、豊野工業団地などへの通勤利便性向上が見込まれており、人材確保や企業活動の活性化にもつながる可能性があります。

3.防災機能の強化

災害発生時には、自動運転専用道路を消防車や救急車などの緊急車両用道路として活用することも想定されており、地域のレジリエンス向上が期待されています。

4.先端技術を活用したスマートなまちづくり

交通結節点を中心としたコンパクトシティの形成や、新たな産業・サービスの創出など、交通政策を超えた地域発展への波及効果も視野に入れています。

東部地域全体を結ぶ「新しい大動脈」へ

八潮から春日部へ「自動運転BRT」構想が始動 東埼玉道路を活用した次世代交通網の実現へ

東埼玉道路沿線地域におけるBRTなど新たな交通システムの導入構想

公表された将来イメージ図では、八潮市を起点に草加市、越谷市、三郷市、吉川市、松伏町、春日部市を結ぶ広域交通ネットワークが描かれています。

八潮市では道路交通課題の解消や災害対策、地域振興への効果が期待され、草加市では工業団地や市内各エリアへのアクセス向上、越谷市ではレイクタウン周辺の渋滞緩和や観光活性化などが見込まれています。

また、鉄道駅のない松伏町では新たな公共交通ネットワークの形成、三郷市や吉川市では人の流れや交流人口の増加、春日部市では県南部とのアクセス向上など、それぞれの地域が抱える課題解決への期待も高まっています。

研究会では今後、バス事業者など関係機関との調整を進めながら、構想実現に向けた具体的な検証を進めていく方針です。現時点ではまだ構想段階ですが、もし実現すれば、宇都宮市のLRTのように全国から注目を集める先進事例となる可能性もあります。

八潮市を含む埼玉県東部地域が、将来「自動運転BRT先進地域」として全国から視察が訪れる日が来るのか。今回の構想公表は、その未来への第一歩と言えるかもしれません。

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