【八潮市】「被害は終わっていない」陥没事故から1年、住民の声を記録する

アンケート調査の結果報告

1.アンケート実施の目的八潮市陥没事故による被害の実態と、県の【その他の補償】に対する住民・事業主の受け止めを把握し、県および国に提出するために実施したものです。

2.回答状況の概要

・回答件数:住民  129件
・回答件数:事業主  11件

事故現場周辺では、現在も生活や事業への影響が続いていることが確認されました。

3.確認された主な被害の傾向

アンケートの結果、以下の被害が広範囲に、かつ継続して生じていることが明らかになりました。

(1)硫化水素等による物的被害 (9月時点での調査)(回答数:78)

・建物のひび割れ(壁 基礎 天井)・・・・・ 21件 ・・ 27%
・ドアや窓の建付けの不具合 ・・・・・ 13件 ・・ 17%
・床や壁の傾き ゆがみ ・・・・・ 4件 ・・ 5%
・外壁の損傷 汚れ ・・・・・ 20件 ・・ 26%
・エアコンの不具合や故障 ・・・・・ 43件 ・・ 55%
・電化製品の腐食や不具合(TV・パソコン等)・・・・ 7件 ・・ 9%
・エコキュート故障 ・・・・・ 4件 ・・ 5%
・ソーラーパネル不具合 ・・・・・ 4件 ・・ 5%
・車の腐食や不具合 ・・・・・ 58件 ・・ 95%(回答数:61)
・バイクの腐食や故障 ・・・・・ 3台 ・・ 5%(回答数:61)
・自転車の腐食や故障 ・・・・・ 24台 ・・ 39%(回答数:61)
・その他 アクセサリー、貴金属類の腐食や劣化

これらの被害は一定の割合で発生しており、事故後の生活環境が住民の財産や日常生活に継続的な影響を及ぼしていることが、アンケート結果から示されました。さらに、多くの回答で、被害は一過性ではなく、事故後に新たに生じたものとされています。

(2)健康・精神面への影響 (9月時点での調査)(回答数:112)

・ストレス・精神的負担あり ・・・・ 96件 ・・ 86%
・不眠 ・・・・・ 40件 ・・ 36%
・頭痛 ・・・・・ 27件 ・・ 24%
・咳がでる ・・・・・ 24件 ・・ 21%
・のどの痛み ・・・・・ 18件 ・・ 16%
・声がかれる ・・・・・ 11件 ・・ 10%
・喘息の悪化または新たな発症 ・・・・ 6件 ・・ 6%
・血圧の低下 ・・・・・ 3件 ・・ 3%
・気分の落ちこみ ・・・・・ 39件 ・・ 35%
・日常でのイライラ ・・・・・ 49件 ・・ 44%
・精神的不安定 自律神経のみだれ ・・・・ 57件 ・・ 51%
・食欲不振 ・・・・・ 15件 ・・ 13%
・その他 飼い犬の健康被害多数報告

健康被害については、客観的な証明が難しい一方で、生活上の支障が実際に生じていることが、多くの回答から確認されました。

県が公式に示している硫化水素の濃度が「0ppm」とされている点について、調査結果と住民の実情との間に大きな乖離があると感じているとの声が多数寄せられています。

こうした状況から、現在示されている測定結果のみでは、住民の健康被害や不安を十分に説明できておらず、納得に至っていない住民が多いことがうかがえます。

(3)事業・営業への影響 (9月時点での調査)(全回答数:12)

・売り上げがなくなった ・・・・・ 3件 ・・ 33%(回答数:12)
・売り上げ減少 ・・・・・ 3件 ・・ 33%(回答数:12)
・顧客喪失 ・・・・・ 6件 ・・ 75%(回答数:8)
・顧客減少 ・・・・・ 3件 ・・ 37%(回答数:8)
・交通規制による物流の滞りや停止 ・・・・・ 5件 ・・ 56%(回答数:9)
・交通規制による物流コストの増加 ・・・・・ 2件 ・・ 22%(回答数:9)
・交通規制による仕入れの滞りや停止 ・・・・・ 4件 ・・ 44%(回答数:9)
・売り上げ減少後の固定費(家賃・光熱費)維持 ・・・・ 5件 ・・ 56%(回答数:9)
・硫化水素による設備・機器の損害 ・・・・・ 4件 ・・ 44%(回答数:9)
・車の腐食 ・・・・・ 4件 ・・ 44%(回答数:9)
・エアコンの故障 ・・・・・ 3件 ・・ 37%(回答数:9)
・従業員の健康被害 ・・・・・ 5件 ・・ 72%(回答数:7)
・経営のストレス ・・・・・ 7件 ・・ 58%(回答数:12)
・行政との交渉のストレス ・・・・・ 7件 ・・ 58%(回答数:12)
・土地・建物の資産価値への不安 ・・・・・ 7件 ・・ 70%(回答数:10)
・今後の地盤や環境に関する不安 ・・・・・ 8件 ・・ 80%(回答数:10)
・風評被害 ・・・・・ 5件 ・・ 50%(回答数:10)
・その他

事故の影響は生活面にとどまらず、事業活動や経営の継続にも深刻な影響を及ぼしている実態が明らかになりました。具体的には、営業休業、時間短縮、来客数の減少、売上への影響、設備や機器の不具合、臭気や工事による営業環境の悪化などが報告されています。

事業主にとっては、事故後の影響が一時的なものではなく、今後も工事が長期に続く中で、将来への不安や経営継続への懸念が大きいことがうかがえます。

4.【その他の補償】に対する意見

アンケートから、次の点が共通して指摘されています。

<住民>(回答数:121)

回答数:120件 「その他の補償」に不満 ・・・・・ 93件 ・・ 78%
回答数:121件 一人2万の補償金額が少ないと感じている ・・・・ 94件 ・・ 77%

・何に対しての補償なのか不明確 ・・・・・ 81件 ・・ 67%
・どの期間の補償なのか不明確 ・・・・・ 78件 ・・ 65%
・実際の被害に見合っていない ・・・・・ 76件 ・・ 62%
・「今回限りで再請求できない」に納得ができない ・・・・ 93件 ・・ 77%
・契約後の被害が出ても補償されない点に不満 ・・・・・ 81件 ・・ 67%
・「その他の補償」の一括処理に納得できない ・・・・・ 59件 ・・ 49%
・健康被害・環境被害への説明が不十分 ・・・・・ 64件 ・・ 53%
・精神的被害も対象なのか不透明 ・・・・・ 59件 ・・ 49%
・精神的苦痛の慰謝料が考慮されていない ・・・・ 59件 ・・ 49%
・200mの補償範囲の根拠が不明確 ・・・・・ 59件 ・・ 49%
・200mの境界線が納得できない ・・・・・ 32件 ・・ 26%
・被害の程度に関わらず一律なのは不公平だ ・・・・・ 66件 ・・ 54%
・現場に近い住民に差をつけるべきだ ・・・・・ 73件 ・・ 60%
・失望しているが泣き寝入りはしたくない ・・・・・ 74件 ・・ 61%
・失望しており諦めざるを得ないと感じている ・・・・・ 24件 ・・ 10%
・一部は評価しているが改善が必要だ ・・・・・ 41件 ・・ 11%

<事業主>(回答数:11)

・再開までの生活・経営補償への配慮が不十分 ・・・・・ 4件 ・・ 36%
・営業損失に見合った補償ではない ・・・・・ 4件 ・・ 36%
・従業員への補償がない ・・・・・ 3件 ・・ 27%
・休業の不安・経営ストレスへの配慮が不十分 ・・・・・ 9件 ・・ 81%
・会社の規模や被害の大きさへの考慮が不十分 ・・・・・ 2件 ・・ 18%
・補償金額そのものが低すぎる ・・・・・ 7件 ・・ 58%
・一律は不公平である ・・・・・ 7件 ・・ 58%
・被害実態に応じた補償をするべきである ・・・・・ 10件 ・・ 83%

【その他の補償】で一括して処理されることに、多くの住民・事業主が納得していないことが明らかになりました。特に補償の趣旨や対象範囲が分かりにくく、どの被害がどこまで補償されるのか不透明である点への不安が目立ちます。

また、補償内容が「今回限り」とされ、将来的な被害や影響に対する再度の請求が認められていないことについては、長期にわたる工事や影響が見込まれる中で、現実に即していないとの意見が多く見られました。

さらに、実際の被害の大きさに対して補償額がとても十分とは言えず、被害の実態と補償内容との間に大きな隔たりがあると感じる住民が多数をしめています。

5.住民の意識として見えてきたこと

・被害は現在進行形である
・個人対応には限界がある
・長期工事(今後約5年間)への不安が大きい
・声をまとめ、行政に正式に届ける必要性を感じている

アンケート結果から、
回答数:123件のうち、被害者の会が必要:90件 ・・ 73%
住民が「連携して行動する必要性」を強く認識していることが確認されました。

アンケート調査の活用報告

【八潮市】「被害は終わっていない」陥没事故から1年、住民の声を記録する

2025年7月31日。陥没事故現場周辺にて撮影

<大野知事からの回答(要約)>

本報告書の取りまとめ直前に、大野知事より本件に関する回答をいただきましたので、以下にその要旨を追記いたします。

大野知事より、「被害者の会」を立ち上げ、住民自らが1年間の実態調査を行い、 その結果を実態調査報告書および要望書として提出する予定であることについて、 受け止める旨の回答がありました。

事故発生から1年近くが経過した現在も、現場周辺では復旧工事が続き、 住民の生活が事故前の状態に戻っていないことについて、県として改めてお詫びの意が示されています。

また、実態調査報告書および要望書が提出された際には、会員の意見を丁寧に受け止めるとされており、必要に応じて、下水道事業管理者や知事本人が直接話を聞くことも検討する、との考えが示されました。

あわせて、「被害者の会」の有無にかかわらず、現場周辺住民からの個別の相談については、引き続き県の相談窓口で対応するとの案内がありました。

※ この要約は、「知事への提案」から木下さんに届けられた回答を、住民の皆様に要約してお伝えしたものです。

<県議会議員への提出>

県の管理責任が問われる事故であることから、調査結果を県議会議員に提出しました。
【その他の補償】の内容見直し、被害実態に見合った対応、健康被害や精神的負担への配慮について、議会での問題提起と行政への働きかけを求めています。

<市長への提出>

市長には、調査結果を県へ直接提出していただきました。
市としての県への要請や意見表明、住民支援策の検討、今後の工事期間を見据えた対応体制の整備などについて、市政運営への反映を求めています。

<市議会議員への提出>

住民生活に直結する問題として、市議会議員にも調査結果を共有しました。
生活環境への影響や健康・物的被害の実態を踏まえ、市として可能な支援や対応の検討を求めています。

<報道期間へ情報提供>

調査結果を基に、報道機関へ資料提供を行いました。
数値に基づく客観的な結果や、事故から時間が経過した現在も影響が続いている実態、住民主体で実施した調査であることを伝えることを目的としています。

硫化水素による被害について

これまでに確認されている硫化水素による被害について
アンケート調査および住民からの聞き取りにより、 事故後、生活の中で以下のような被害が実際に確認されています。

<物的被害>
・車・バイク・自転車のメッキ部分の腐食
・電化製品の故障(エアコン、パソコン、マウス、エコキュート 等)
・家屋内外の金属部分の腐食(蛇口、金具 等)
・貴金属・アクセサリー類の変色・腐食

<住民の皆様へ>
上記のような被害が確認されている場合は、県へ情報提供をご検討ください。被害の報告が積み重なることで、実態の把握や対応、再検証につながる可能性があります。
なお、近隣住民向けの専用ダイヤル(埼玉県下水道局 下水道管理課)が設けられ、周知されています。

個人宅4か所で測定している硫化水素の数値について

県の調査として、 個人宅4か所で硫化水素の測定が9月24日から行われ、 現在も継続されています。木下さん宅に設置された測定機の記録では、 9月24日夜にリビングで0.2~0.6ppm、 屋外で最大2.5ppmを記録しました。また9月29日夕方には、 リビングで0.7ppm、 屋外で最大7.9ppmが記録され、 この時間帯には工事現場付近でアラーム音も確認されています。

これらはいずれも住民の生活空間およびその周辺で測定された実測値であり、県がこれまで示してきた説明との間に差があるとして、測定方法や評価、安全管理体制について懸念の声が上がっています。

<臭気と硫化水素濃度に関する住民の認識>

事故発生後から夏にかけて、強い臭気が継続的に確認されていました。

約3か月間にわたる測定の結果、臭気が強い時間帯には硫化水素濃度が高くなる傾向が確認されています。このため、事故直後から続いていた強い臭気についても、高濃度の硫化水素が発生していた可能性があると住民は受け止めています。一方で、事故直後の測定データが残されていないことが、当時の状況を数値で示せず、不安や納得感の得られにくさにつながっています。

<専門家からの意見について>

11月23日に開催された硫化水素に関する講演会で、埼玉医科大学医学部・臨床中毒学の上條吉人先生から、事故直後には高濃度の硫化水素が発生していた可能性があるとの見解が示されました。

県の対応について

  • 車の腐食は補償の対象になりました。
  • 自転車やバイク、エアコン、エコキュートについては、現時点で明確な回答は示されていません。
  • 「その他の補償」の申請期限が延長となりました。

<議会での主な動きと補償方針>

  • 特別委員会の設置:埼玉県議会は「八潮市道路陥没事故調査等特別委員会」を設置し、事故対応や下水道老朽化対策、補償の方向性などについて審査を行いました。
  • 補償に関する決議:2025年10月9日、特別委員会は、県に対し住民・事業者に寄り添った適切な補償対応などを求める決議と、国に対し復旧事業費の財政措置を求める意見書を可決しました。
  • 具体的な補償案の提示:埼玉県は、影響を受けた半径200メートル圏内の住民や事業者に対し、具体的な金銭補償案を提示しました。
  • 対象:半径200メートル圏内の住民(約419世帯)および事業者(約90事業所)。
  • 金額:住民には1世帯あたり最低5万円(1人あたり2万円を加算)、事業者には一律10万円を支払う方針を示しました。
  • その他の被害:家屋のひび割れ、臭気、工事による振動・騒音、交通規制に伴う余分な経費(搬入・運賃など)などについても、個別に因果関係が認められれば補償対象とする考えが示されています。
  • 住民・事業者の反応:県が示した一律の補償案に対し、影響を受けた事業者などからは、実際の損害額に見合わないとして不満の声も上がっています。
  • 補償申請状況:2025年12月中旬時点で、補償対象となる計509者のうち、申請を行ったのは約6割に留まっていますが、県は期限後も受け付けを続ける方針です。

「その他の補償」の申請について

現在、県が今後どのように対応していくのかは、依然として見通しが立っていません。補償内容が見直されるかどうかについても、現時点では明確な情報は示されていません。

補償の申請をしても、それで終わりではありません。申請は現時点で取り得る一つの手段であり、私たちは今後も住民の実情や不安の声を伝え続けていきます。

どうか、ご自身やご家族の状況に合わせて、無理のない判断をしてください。申請した方も、まだ申請していない方も、これからも共に声を上げていきましょう。

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