投資用不動産を扱う株式会社グローバル・リンク・マネジメント(本社:東京都渋谷区、以下GLM)は、(1)東京という都市を分析しその魅力を世界に向けて発信すること、(2)不動産を核とした新しいサービスの開発、等を目的に、明治大学名誉教授 市川宏雄 氏を所長に迎え、「グローバル都市不動産研究所(以下、同研究所)」を2019年1月1日に設立しました。
(過去のレポート一覧はこちら )
このたび同研究所では、調査・研究の第23弾として、鉄道路線図と街の変化による不動産価値の変化について分析。この中で、つくばエキスプレスについて興味深いデータがあげられています。是非ご覧ください。
自治体政策を一新させる人口へのインパクト
鉄道路線が地価と共に街の人口動態(居住者)へ大きな影響を与えるケースを見てみます。
地価を押上げたつくばエクスプレス
子育てファミリー層が続々転入
近年、首都圏の人口動態に最大の影響を与えた新線といえば、2005年開業のつくばエクスプレス(以下TX)でしょう【図1】。
JR・東京メトロ日比谷線の通る秋葉原駅と茨城県のつくば駅の全長58.3kmを最速45分で結び、都心部と筑波研究学園都市とのアクセスが格段に向上。抜群の通勤利便性から沿線の都市開発が次々と進み、わずか十数年で街が大きく変貌しました。大型ショッピングモールなどが増える一方、郊外には豊かな自然が残り、住宅地としての人気が高まっています。
沿線の7つの市(東京都区部は除く)の人口推移をみると、開業以降いずれも人口増を続け、千葉県流山市(2005~2023年で38.2%増)、埼玉県八潮市(24.2%増)、茨城県守谷市(同29.7%増)、同つくばみらい市(同27.4%増)でとくに高い人口増加率を示しています【表5】。
とりわけ流山市の年間人口増加率は、 2021年まで市として6年連続で全国トップ(2022年は2位)を記録(総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」による)。
さらに年齢別人口構成比の推移(2005~2020年)でみても、つくば市を除く6市で30~49歳の割合が上昇したほか、流山市とつくばみらい市は0~14歳の割合も伸びています。各市の平均年齢(2020年時点)はそれぞれの県平均と比べて若く、とくに八潮市(44.7歳)、流山市(43.7歳)、守谷市(44.0歳)、つくば市(42.4歳)は40歳代前半と、多くの若いファミリー層が流入して街の活気がうかがえます【表6】。
沿線自治体のなかでもひときわ人気の高い流山市を詳しく見てみます。中心となる流山おおたかの森駅は秋葉原駅まで最速25分、駅前には大型商業施設「流山おおたかの森S・C」や文化施設「スターツおおたかの森ホール」、専門クリニックが入るメディカルモールが整備されています。生活利便性の高さに加え、自然豊かな公園が多く存在しています。
同市は2021年に待機児童数ゼロを達成し、指定保育所(園)をバスで結ぶ「送迎保育ステーション」の設置や、育児の悩み・不安を気軽に話し合える「子育てサロン」の展開など、独自の子育て支援策を打ち出し、子育て世代から高い支持を得ています。前出の『住みたい街(駅)ランキング』でも、39位(2021年)から16位(2022・23年)に急浮上。駅周辺の地価は、商業地では過去5年間で46.3%、住宅地では過去7年間で14.3%(駅から近い住宅地では最近3年間で13.3%)上昇しています(TX沿線の街の地価動向は【表7】を参照)。
守谷市のTX停車駅である守谷駅も、秋葉原駅まで最速32分、都内の通勤地とほぼ変わらないアクセスです。TX開業によって計画的な大規模宅地開発が進み、東口には大型商業施設「ブランチ守谷」がオープン、ますます生活利便性が増しています。四季折々の花が楽しめる「四季の里公園」や「守谷野鳥のみち自然園」など大小さまざまな公園があり、緑も豊富です。
同市も「子育て王国もりや」をスローガンに掲げ、子育て環境整備や学校教育改革、児童の放課後対策事業の充実などを推進。共働き家庭を中心にファミリー層の注目を集めています。 2023年の『住みたい街(駅)ランキング』で「守谷」はまだ47位ですが、『穴場だと思う街(駅)ランキング』では9位と、今後さらに期待が集まりそうです。
なお同駅周辺の地価は、過去7年間で商業地では29.9%、住宅地では25.5%上昇しました。
レポート全文については、以下のプレスリリースをご確認ください。